フルートを始めた人が、1オクターブ目をマスターした後にぶち当たるのが、2オクターブ目の壁です。この壁は越えてしまえばなんて事ないのですが、越えるまでがとても大変だったりします。
 フルートは基本的に2オクターブ目以上を倍音のコントロールで吹き分けますよね。高い音域は、低音域よりもスピードの速い息が必要で、息の方向も少し高めを意識します。
 息のスピードを上げる方法はいくつかあると思いますが、具体的には低音域と同じ息の量で息の出口(アパチュア)を小さくするとか、低音域と同じ大きさのアパチュアでとにかくたくさん吹くとかです。要は、あるアパチュアの大きさに対して息の量が多くなると必然的に息のスピードは上がるということですね。
 アパチュアを小さくする時にどこの筋肉をどう使うのかで、音色は変わってきます。唇を真横にぎゅっと引いてもアパチュアは小さくなりますが、これは音色がきつくなるのであまり良くないと思われます。また、上唇を下げて歌口にかぶせるようにするのも音色のためにはお勧めできません。どちらかというと下唇を少しだけ上唇に近づける感覚の方が良いようです。そうすると同時に息の方向も少し持ち上がるので、高い倍音が出やすくなります。
 初心者の方で、アパチュアが広すぎて2オクターブ目が出せない方がいます。音に芯がなく、どこかぼやけた印象の音色です。そういう場合は多少唇の周りにテンションをかける必要があります。「ぷっ」とスイカの種を飛ばすようにしてみると、唇の周りの筋肉が程よく緊張するのがわかると思います。この筋肉を意識して、息をフォーカスさせましょう。
 経験者の方ですと、息は十分に出ているがフォーカスしすぎていて、低音はガリガリ・・・むしろブーブー鳴るのに2オクターブ目が当たらないという方もいます。 これはリッププレートを当てる位置が良くない可能性があります。アパチュアからリッププレートのエッヂまでは、一定の距離が必要です。それが近すぎてしまうと、上の倍音が出なくなってしまうことがあります。こういう時は、リッププレートを唇に当てるときに、プレートの手前のカーブと顎のくぼみをジャストフィットさせてみてください。いつもよりもかなり下の方にリッププレートが来る感じがするかもしれませんが、騙されたと思って吹いてみましょう。こうすると、顎のくぼみを利用することで息の方向がいい具合に下向き加減になり、アパチュアとエッヂの距離もある程度保たれます。 
 以上の二つの症状では明らかに音色が違うので、どちらの症状なのかはすぐにわかります。もともとの骨格や唇の形、歯並びなどによって、自然に息を吐いた時の角度にも個人差があるので、もちろん一様には解決できません。ですが、大概は息を集められないか、リッププレートを当てる位置が悪いかのどちらかです。
 音が出るか出ないか、はたまたオクターブを自由にコントロールできるかどうかは、リッププレートを唇の下に当てて、楽器を構えた瞬間に決まると言って良いと思います。そのあとどうこうしようとしても無理かと・・・。吹き始めの位置関係は大切です