今の生徒さんで、歯の矯正を始めた方が2人います。1人は中学生、1人は大学生です。私自身は矯正したことがないので、吹きにくさは推測するしかありません。
吹奏楽部などで金管楽器を担当していた生徒が、歯の矯正を始めるのを機に打楽器かフルートになったりすることがあります。おそらく管楽器の中では、フルートが一番矯正の影響を受けにくいというイメージがあるのだと思います。
他の楽器をちゃんとやったことがないので本当のところは分かりませんが、金管楽器は矯正の器具が当たって痛いでしょうし、リード楽器も難しそう…。
しかしながらフルートに関しても決して吹きやすい状態ではないので、矯正を始めた2人の生徒さんは苦労していました。ただ、ある程度音を出すことは可能であることがわかりました。
器具をつけると歯と唇の間に厚みが出る(前歯に器具をつけている場合。つける場所によっても違います)ので、それまでと同じようにリッププレートを下唇から下顎にかけて当てると、アパチュア(唇の間の息の出口)と歌口の間が遠くなってしまいます。なので、今までと同じように当てて、無理な状態のまま唇を張ったり被せたり色々して苦しむより、もう割り切って、楽器を当てる場所を新たに構築するのが良いようです。
だいたい半年くらい器具をつけると聞いています。楽器を当てる場所を変えて、それに慣れるのにだいたい1ヶ月位(練習の頻度によって個人差がありますが)。また器具が外れたら当て方を変えなければなりませんが、それもまた1ヶ月あれば慣れてくるはずです。
昨日の生徒さんは、上下の歯に器具が揃った状態での初レッスンでした。最初の吹き始めは難しそうでしたが、気を取り直して頭部管だけで音探し。今の状態でそれまでと同じようにすると、物理的に音が出にくい位置にリッププレートを当てることになるので、一旦それを忘れてもらいます。
しかし下唇から下顎にかけての皮膚は、それまでの感覚を覚えているので、どうしても同じような場所にリッププレートを当てようとしてしまいがち。それではいつまで経っても音は出ないので、私が勧めているのはリッププレートを当てる前に唇から息を出しておくという方法です。

①頭部管だけを両手で持つ。
②両唇は自然に閉じて、まっすぐ息を出す。
③息の出ているところへ頭部管を近づけていって、リッププレートと唇(と下顎)との新しい位置関係を探す。

いつも顎のくぼみにリッププレートの手前を落ち着けて、下唇と皮膚の境目くらいに歌口のエッジが来るように吹いている方なのですが、探してみた結果かなり下唇の上の方に楽器を当てると吹きやすいということがわかりました。もちろん今の音は彼女のベストではありませんが、矯正期間中もそこそこ吹ける状態になりそうです。