おはようございます。先日オケの大きな本番が一つ終わり、ほっとしたのもつかの間、まだ月末に大事な本番があるのでまた練習の日々になりそうです
 さて、レッスンをしていると本当に人それぞれ悩みは違っていて、同じ悩みでも状況が違っていて、いつも頭を悩ませています。 もちろん最も悩んでいるのはご本人だと思うので、一緒になって考えています。今最も難しいのはやはり中音域の壁を破れないという問題を抱える生徒さん。この方、全く中音域が出ないわけではないです。出るけれども、とにかく細い!!細くて苦しそうで、ちょっと的が外れただけでも音が途切れたり、ちりめんビブラートがかかることも。出ないとどんどん歌口のエッヂを唇に近づけようとする(いわゆる尺八の「メリ」の状態)。さらに音が細く、暗くなる・・・。この負のスパイラルに陥っています。
 もちろん最初にお会いした時から、アパチュア(吹くときに両唇の間にできる穴)が小さい、つまり唇に不要な力みがあること、 吹き付ける息に対する歌口エッヂの角度が良くないことは分かっていました。持ち方、姿勢についても最初から試行錯誤しています。しかし色々な手立てをしてきても、なかなか目覚ましい解決には繋がっていませんでした。
 しかし前回のレッスンでふと、生徒さんが吹き疲れた時に「みぞおち辺り」をさする仕草をしているのに気付きました。なぜそんな所が疲れるのか疑問に思ったのでいろいろお聞きすると、最初に体験レッスンを受けた先生から「みぞおちの辺りの筋肉」を使ってみたら?とアドバイスを受けたんだとか。その時もなかなか中音域の音が出ず、先生も悩んだ末そのようなことを言ったようです。 しかし、これがこの半年くらいの悩みの種だったのではないかと思ったのです。実際私もそのようにして吹こうとしましたが、苦しくて吹けませんでした。 
 フルートにおいて中音域以上の音、つまり高次倍音を出すには、1オクターブ目の低音域を吹くときより息のスピードを上げる必要があります。 息のスピードの上げ方には幾つか方法がありますが、低音域・中音域の吹き分けの際の「アパチュアと息の量の関係」としては以下のようになります。

①低音域を吹くときのアパチュアのまま、息の量を増やす
②低音域を吹くときの息の量のまま、アパチュアを小さくする  


低・中音域の吹き分けには、本来息の方向なども関わってきますがとりあえず置いておきます。
 今当該の生徒さんに起こっているのは、①②の混合型であると考えられます。みぞおち辺りに力を入れることでおそらく肺が圧迫され息がたくさん出て行き、その多くの息を唇でせき止めるためアパチュアを締めざるをえない。よって中音域も出ないわけではないけど細くて余裕のない音になってしまいます。みぞおちに力を入れることによって、逆に息が出て行かないということも考えられます。どちらにせよ、みぞおちに力を無理に入れようとした時には呼吸に支障が出ると思います。楽器を吹く時には、瞬時に胴体の力を抜かないと息を吸うことができません。そのオン・オフが巧みにできるのであれば有効かもしれませんが・・・。
 まずはそのみぞおちの力みを取らないといけませんが、すぐに取れるのものではありません。そもそもそこに力を入れないとオクターブ上が出ないと思っていたわけで、ただそれを止めることが解決にはなりません。仮に②の状態にできたとしても、ただアパチュアを小さくするだけでは今あるアパチュアを締めすぎるという癖は無くならないからです。
 ではどうすれば良いか。根本的に治すには、オクターブが変わってもアパチュアの大きさを変えないつもりで吹けるようにした方が良いというのが私の持論です。中音域以上の音を豊かな響きで吹くために必要な条件を考えてみます。

①無理なくたくさん息を吸えるようにする
②吸った息を肺に溜めておけるようにする(ゆっくり吐けるようにする)
③唇に頼らないで息にスピードをつける


 ①を行うためには自然な姿勢が取れているか(特に頭・首・肩など)、腕・肘・手にかけて無理なく楽器を保持できているか、と言ったいわゆる体の使い方・在り方の問題と、肺がどれくらい大きいのか、どこからどこまであるのか、などのちょっとした知識を持っているかどうかということが関わってきます。
 ②に関しては息が必要以上に出て行かないように「支える」ということが必要です。いつか書いたかもしれませんが、フルートは他の楽器と違って息がどんどん出て行ってしまう楽器です。リードや金管のマウスピースのように、息がせき止められることがありません。なので他の楽器よりも特にこの「支え」について考える必要があります。またこのことに関しては奏者によってかなり意見が違うかもしれません。多くの息を一生懸命唇でコントロールするのでは、唇の周りの口輪筋がすぐに音を上げますし、柔らかい音は出せません。吐く息を適切な量に常にコントロールしておく必要があります。
 ③は最終関門です。なるべく唇の締め具合だけで音をコントロールしないようにする。じゃあどうするんだ!!と怒りの声が聞こえてきそうですが、かく言う私もかつてはこのことで悩んでいました。息のスピードを上げるためには、息の通り道を狭めるかたくさん吹くかのどちらかです。たくさん吹くと常にフォルテ(強奏)になってしまうのでそれだけではダメです。つまり前者「息の通り道を狭める」というのが答えのようですが、それをなるべくアパチュアを小さくしないで行えるようにしたいのです。
 長くなってきましたので、続きはまた後日・・・。