レッスンで特に吹奏楽部の子供達によく聞かれること第1位と言っても良い悩み、「指が回りません!」。いやー簡単に回る方法があるなら私も教えて欲しい(笑)とは言いませんけど、だいたい幾つかの傾向があります。

 ①単純に運指がインプットできていない(さらってない)
 ②少しさらって音も運指も分かっているけど転んだり滑ったりする
 ③ちゃんと順番に指は動いているはずなのに音がついてこない(かすったり裏返ったりする)

①と②には差があるように感じるかもしれませんが、②もさらっていないのとほぼ同じ状態と言えます。一部の天才を除いて、譜面通り正確に音を並べられるようになるためには、その運指の組み合わせを頭に焼き付ける作業が必要です。ここが最も大事で、この作業をいい加減にやると本番で泣くことになります…。
①〜③の問題は全て、さらうプロセスの中で解決できます。

☆まずは100%間違えない速度で吹く!
 例えばインテンポ(譜面や指揮者から指示されているテンポ)が♩=120の16分音符のメロディだとします。いきなりこの速さでは出来ない運指です(できる人は読む必要なし笑)。
 さらう時にはまず♩=60くらいまで落としてもいいので、とにかく間違えないように吹きます。そして頑張らなくても(指に力を入れなくても)転ばないテンポにしましょう。この時点で転ぶようだと、テンポを上げた時にも自分のコントロール下で指を制御できなくなります。その箇所を10回中10回出来るように。テンポを上げるのはまだまだ先です。
☆テンポを落とした練習の時にも、譜面上のダイナミクス、アーティキュレーション、ニュアンス(ドルチェとかコンフォーコとか)も再現する!
 曲の一部の場合は特に、ゆっくり吹いている時から本番で吹く状態を想定しておくことはとても大切です。
☆常に良い響きで、指には無駄な力を入れないでパラパラ動かす!
 落ち着いて吹いている時の息の状態(量やスピード)を意識します。前にも書きましたが、速いパッセージを吹く時にはつい息のスピードが上がりすぎたり、指に力が入ったりしやすいです。これが③の原因。ゆっくりの時点で既に指はガチガチ、音もカスカスでは、速くなった時に綺麗に吹けるわけがありません。まずは辛抱強く、間違えない練習を積み重ねましょう。

 こうして数日間同じテンポで間違えない練習を重ねたら、同じように音色や指の力みに注意しながらじわじわ(1〜2目盛、あるいはメトロノームを1刻みにして細かく)テンポを上げていきます。1日のうちにどんどんテンポを上げるのはあまりお勧めしません。テンポを上げるタイミングは人それぞれで良いと思いますが、場合によっては1週間くらい変えなくても良いです。テンポを上げた時にどこかに少しでも無理を感じたらテンポを元に戻す、あるいはそれより遅めにしましょう。

 この方法は本番まである程度時間がないと出来ないと思いますが、効果は確実です。普段のスケールやアルペジオなどの練習にも取り入れて頂くと、曲をさらうのが楽になりますよ。
 以前はよく、難しいフレーズに付点のリズムをつけたり、つけなかったりという練習もしていました。この方法は即効性があり、付点をつけた直後譜面通りのリズム(イーブン)に戻すとあら不思議!インテンポで出来ちゃったりする。しかし翌日にはまた出来なくなる…この繰り返しでした(やり方の問題かもしれませんが…)
 今回ご紹介した方法は、1日2、30分くらい…さらう場所が多いともう少しかかりますが、無理せず失敗しない練習を地道に重ねるのがポイント。私は予めさらわなければならないパッセージやスケールを五線紙に抜き出して、そこにテンポをメモしながらさらさらーっとまとめて練習します。効率よくさらえるのでオススメです。
 難しいフレーズも、さらう時は急がば回れ…ウサギとカメならカメの方が良い結果になるかもしれません。