自分が教える立場になって、改めて難しいなぁと気がつくこともたくさんあります。そのうちの一つが「レガート」のこと。
 音符と音符の間に掛けられたスラーや、legatoという指示・・・。管楽器の場合そういったアーティキュレーションを演奏する時、ざっくり言うとタンギングをするのかしないのかで区別します。しかしながら、それだけでは本当のレガートとは言えない。ある音から次の音へレガートで演奏するというのは、単にアーティキュレーションの問題だけではないのです。レガートを「表現」しなければなりません。
 よく皆さんが練習する、「ソノリテ」の練習(マルセル・モイーズ著「ソノリテについて」参照)。これはただのロングトーンではありません。ソノリテの意味は「響き」。そして、この2つないし3つ以上に渡って半音階をゆっくり降りてくる練習は、これ以上ない程大事なレガートの練習です。
 音一つ一つに息を吐いてしまう方は結構いらっしゃるのですが、そういう風に息を使っているとどうしてもレガートには聞こえず、むしろ「後押し」という癖のある吹き方に聞こえやすい。そして本人はそれに気付きにくい場合が多いです。息はフレーズ一つに対して一息。これもまた雑な言い方ですが、息は吐きっぱなしで指だけ動かす感じです(厳密には音によって多少の吹き分けが必要であり、さらに音の方向性などまで表現します)。
 これを曲の中で矯正していくのは結構難しいです。やはりソノリテの練習などを使い、客観的に聴いてもらいながら、聴いてもらえなければ自分で厳しく聴きながら、あるいは録音しながら、音の連結を注意深く練習し直す必要があります。間に余計な音は入っていないか?(運指の問題でもあります)隣り合った音同士の音質に差はないか?音の移り変わりは滑らかか?…
 2つの音でレガートできるようになったら、3つ、4つと音を増やしていきます。本当はそれが出来てからスケールやアルペジオも練習するべきなんですね。ただし、そんなに悠長にやっていられない事情のある方もいますが…(笑)レガートは音の数が増えるほど、音と音の幅が離れるほど難しく、音色の差が出やすい音同士だと音色のコントロールを工夫しなければなりません。例えば中音域のレからミ。隣り合った音のように見えますが、実際の吹奏感も音色もかなり違っています。このような場合でも、なるべく両者の音色を歩み寄らせてあげることが必要だと思います。 

 レガートは、間でタンギングをせずにただ音を並べることではなく、聴く人にレガートであることが伝わるように表現することです。そして何より、常に自分の演奏を客観的に聴き、思い通りのレガートが出来ているかをチェックすることが大事です。