関東は強めの雨が降ることが多いこの頃ですね大変ご無沙汰しております。
 教えに行っている学校の合宿・コンクール・文化祭と・・・忙しい日々が続いていたもので、なかなか更新できずすみません。今日は、吹奏楽部の子供達を教えていて、どの学校でも気になっていることです。

 長年吹奏楽やオケをやってきて、今は教える立場になって、思う事があります。フルート・ピッコロ奏者が最も悩まされるのは音程の事ではないでしょうか…?チューナーを見て合わせたはずなのに、合奏に入った時にどうもしっくりこない。他の楽器の音と当たる気がする。私もそういう経験をたくさんしてきました。
 ズバリ。そういう時にチューナーは全く当てにならないと言いたい!!もちろん自分の楽器のスケールの癖(上がりやすい、下がりやすい音)をチェックしたり、dim.をかけた時などにピッチが揺れないように練習するのには使います。しかし他人と音を合わせたりハモらせたりするのにチューナーを使うのは、はっきり言って無駄です。というか、それをしていたらハモらせられるようになれません。

 私は吹奏楽部を指導しながらも、自分が学生の頃からハーモニーディレクターが嫌いです(笑)そして、442Hzのシ♭を鳴らしながら、この音に合わせるまで許さないと言わんばかりの指揮者の目。そりゃあ、それに合わせられるかどうかというのも必要な技術の内ではあるかもしれませんが・・・。吹奏楽部時代は、機械に合わせられたって本番はそんなもの当てにならないじゃないか、とか、音程なんてもっと流動的なものじゃないのか?とモヤモヤが募るばかり
 大学に入ってから初めてオーケストラを経験しました。その合奏では、その集団が音楽を専攻する大学生だったからという事もあると思いますが、ハーモニーディレクターやチューナーといったものが登場することはありません。頼れるのは自分の耳だけ。何てシンプルなんだろうと思いました。そして、ハーモニーの取り方なんかを吹奏楽で鍛えてきたという自負があった癖に、オケではそんなものは僅かな手助けくらいにしかなりませんでした。それまで吹奏楽の大音量の中でいかに聞こえさせるか、いかに音程を合わせるか、ということに執着していましたが、オケで吹くことによって、大切なことはそんなことではなかったと気づかされていきました。

 フルートやピッコロはオケや吹奏楽の中でも高音域を担当しています。ピアノの鍵盤でいう右手の端の方ですよね。昔ピアノの調律師さんの本を読んだことがあって、そこに書いてあったことに物凄く納得しました。ピアノの右端の鍵盤は、チューナーの真ん中のピッチで調律してしまうと、人間の耳には低く聞こえてしまうのだそうです。ある種の錯覚のようなものらしく。なので、高音域はすこーし高めに調律するのが普通なんだそう。そうしてはじめて、それより下の音域の鍵盤との違和感が無くなるそうです。 つまり、ピッコロやフルートのピッチに関しても同じことが言えると思います。いろんな学校のピッコロの子達を教えたり聞いたりしていて「音程悪いなぁ」と思う時は、大概みんなチューナーのど真ん中をめがけて音程を取っています。それでは聞く人には低く聞こえてしまうのです。
 じゃあ具体的にどれ位高く取れば良いの?という質問に対して、「チューナーの0より◯セント高め」とか、そういう答え方はしたくありません。あくまで自分の耳を信じて、その感覚を磨くしかないと思っています。私の場合、ピッコロなら大体20セント前後高めにとっているようですが、それも目安でしかないので絶対当てにしないでください。ピッコロの音色は人それぞれ違いますし、吹いている環境や囲んでいる人の音も違います。その時その時、瞬間的に周りの響きに溶け込み、倍音に乗っかって吹くしかないのです。フルートの場合は2オクターブ目まではそれほど気にしなくても大丈夫ですが、3オクターブ目後半に入ってきた時に合奏の中で低く聞こえていないかどうか気をつける必要があります。

 フルートやピッコロのチューニングをするときは、ハーモニーディレクターの音に合わせるならオクターブ下の基準音を出してもらい、その響きに乗るようにしてピッチを取るのがオススメです。チューナーの真ん中を狙うチューニングは、殆ど意味をなさないと思った方が良いです。他の音、できればオクターブ下の音の響きに乗る、溶け込ませることができるピッチにする。チューナーを使うのは自分の楽器の音程の癖やブレを是正するため。合奏でチューニングするときの助けにはならないので、合奏中もマイクを付けてメーターを見ながら吹いているそこの吹奏楽部員のアナタ!いますぐやめましょう!

 ただし・・・この笛吹きの事情を知っている顧問の先生はなかなかいないと思います。この感覚はフルートを吹いている人にのみあるものかもしれません・・・他の管楽器経験者でも知らないかもしれません。私もかつては機械でのチューニング中はメーター真ん中を吹いて対処し、その後合奏ではメーターにこだわらず、心地よい響き重視で吹くようにしていました。音程の呪縛から離れると、おのずと響きも明るくて可愛らしい音になっていくはずです。