湘南茅ヶ崎のフルート教室+国分寺教室

茅ヶ崎市↔︎国分寺市のフルート奏者・吉本奈美の徒然日記
レッスンのこと、演奏のこと、その他もろもろ

カテゴリ: フルートのコツ

 普段人がフルートを吹いているのを見聞きすると、「ここをこうしたら良くなりそう」とか「こういうことで困っていませんか?」というのが分かるのですが、いざ自分の事となると話は別でして(笑)自分の演奏を客観視するのは本当に難しいです。
 今日ようやく久しぶりの不調から脱却!とっても大切なこと…そして普段生徒さんには言っているのに、自分が忘れていたことを思い出しました。“良い音”を求めるほど遠ざかる…と、とある先生に言われた事があります。まさしく私はその状態に陥っていたのだなぁと…。
 最近の私は、フルートで良い音を出そう!とするあまり、歌口のエッヂを意識し過ぎていたようです。例えばこんな症状はありませんか?

・とにかく唇(口輪筋)が疲れる、もしくは力む
・アタックが怖い
・頭部管はいつもと同じ角度のはずなのに、なぜか音が暗い、もしくは音程が低い
・顔の普段使わない筋肉まで使っている気がする

…こういう時は、息が歌口のエッヂまでで止まってしまっている事が結構あります。エッヂに集めようとすると、息を下に向かわせようとするので唇が固くなりがちです。そして上の倍音を吹くには、かなり息の向きを持ち上げなくてはならなくなるので、余計な労力がかかります。
 そこで、吐く息を歌口のエッヂよりも先までイメージしてみましょう。フルートは歌口のエッヂで息が分割されるから音が出るというより、エッヂを通過していくと鳴るイメージです。息の目標を遠くにイメージ出来ると、上の倍音を吹くために一生懸命息を持ち上げる必要もなく、シビアに狙う必要もなくなるので、楽器の当て方とか角度などにあまり拘らないで吹けるようになります。
 よりストレスがかかる音の出だし…例えばスタッカートの表現や、小さな音で出なければならない箇所、高音域で柔らかく吹く場面など、そういう時こそ息を長くイメージしましょう。怖い所ほどエッヂに息を集めたくなりますが、反対です!

 以前も似たようなことをブログに書いたのですが、自分がこの最も大事なことを失念するとは…しかしおかげで新境地に至りました(笑)良い音で吹きたい、自由になりたい…そう思うほど音が硬くなり、不自由になる…。まずは基本に立ち返って、奏法をシンプルにしていく事が大切ですね。

 今日はやはり「呼吸」、ひいては「姿勢」が肝だったという気づきについて。だいぶ調子が戻ってきたのですが、今朝改善したきっかけはやはり「姿勢」と「呼吸」でした。特に今日は「背中」。学校の仕事でピアノを立ち弾きする日が続いたりして体が疲れていたのもあるのか、今朝は呼吸の際に背中が固まっていることに気がつきました。
 昔は座奏の方が苦手だと思っていたのですが、最近自分で姿勢を見直すには座奏の方が分かりやすい気がしていて(あくまで私はですが)。何気なくへろっと座って、背中がいい感じのカーブを描いたまま息を吸ったら、ぐーーっと背中が広がって空気が体に満たされました。あ、なんだか久しぶりにちゃんと息が入った気がする!そこで、ここ最近背中を張りすぎていたことに気がつきました。背中を楽にして、呼吸を背中主体にしてみたところ、ブレスの度に力んでいたアンブシュアも楽になり、腕に楽器の重さを感じていたのも感じなくなり、指も軽くなりました。
 背中を楽にするには、肩や腕もフリーにしてあげる必要があるので、このような効果があったのだと思います。一般的に「良い姿勢」とは、背筋を伸ばしてピンと立つと思われがちなのですが、これが人間の自然な状態かというとそうではないと思います。色々な方を見てきましたが、頑張るあまり腰を反りすぎたり、肩をいからせすぎたり、腕を上げすぎたり、首が前に出過ぎていたり、下半身が硬かったり、上半身が捻れていたり・・・色々な状態の方がいます。例えば両足は肩幅で、背筋はこうで、腕はこうで・・・という風には書けませんが、やはりその人が「自然」であることを追求することが大事だなと思います。
 最近の私は背中を硬くしていて、息を吸いたくても吸えていなかったようです。楽器を吹くと肩が前に行きがちなので、行かないようにしてみたりしていましたが、そういった無理なコントロールもあまり良くなかったんだなと反省。ありのままで楽器を構えてあげれば、難しいことを考えなくても息は入ってくるんだと再認識しました。
 楽器を吹くときの「背中のあり方」は座っている時の方が分かりやすいと個人的には思います。極端な猫背は良くないですが、張りすぎてしまうのも良くありません。私の場合はちょっと丸いくらいがちょうど良いようです。肺は背中の方までしっかりあるので、ちゃんと吸えると背中が膨らみます。この動きを妨げない背中の状態を目指したいものです。

 フルートという楽器は(だけじゃないかもしれませんが)、吹けば吹くほど分からなくなるもので・・・。最近久方ぶりに調子を崩して、色々と考察していました。口が力んで力んで仕方がなく、特にブレスの前後で何か唇が無駄に頑張ろうとしている模様。
 こういう問題が起きた時にまず考えるのは、ブレスをするときに唇の動きは必要なのか?ということです。呼吸にはさまざまな筋肉や骨の動きが伴いますが、唇で食べるように息を吸う必要は無いですよね。ブレスの仕方は千差万別で、自分に合っていれば人の真似をする必要はないと思っていますが、分からなくなってきた時にはこう考えるようにしています・・・

�無理に上唇を上げて吸う必要はない
�顎がガッツリ下がるほど口を開ける必要も無い
�ただし音を鳴らす時のアパチュア(唇の間にできた穴)の大きさのままで息を吸おうとすると狭すぎるので、空気の通り道を程々に確保するためにパッと力を抜く→そして次の音を吹くためにスッと閉じるだけ

ソノリテの練習などをしながら、ブレスの度に無駄をなくして唇を意識しない状態にしていきます。

私は、どこか力が入るな・・・と気がついた時に、力む筋肉の使い方を考えたりコントロールしようとするとドツボにハマっていく経験をしたので、今はその筋肉を忘れられるようにしたいと思っています。日々自分と体との対話が続きます・・・。

  「フォーカルジストニア」、「局所性ジストニア」または「職業性ジストニア」というワードをご存知でしょうか?恐らくいまだにあまり知られていない「病気(のようなもの)」の一つで、指先などある特定の筋肉を繊細に扱う人に稀に現れる症状です。数年前、左手一本で活躍を続けるピアニストのことがテレビで紹介されていました。その人も「局所性ジストニア」患者です。不思議なのは、日常生活は全く何不自由なく送れるのに、(音楽家の場合は)楽器を扱う時にだけその症状が現れるのです。一種の職業病のようであることから、「職業性ジストニア」とも呼ばれています。

 以前は大変だなぁくらいにしか思っていなかったこの病気が他人事ではなくなったのは、私自身にも軽度ではありますがその症状が出てしまったからです。
 数年前バッハを練習しているとき、下ろそうとしていない指が勝手に下りようとして、思うように吹けなくなりました。私の場合は左手の薬指〜小指にかけて。フルートの人は大方この辺の指を患うそうです。おかしいな、と思う時期がしばらく続いて、練習すればするほど力みがひどくなっていきました。決定打は「アルルの女」をオーケストラで吹かなければならず練習していた時のこと。中高生の頃でも吹けたはずのフレーズがものすごく吹きにくくなってしまったことで、「あ、これは何かおかしいな」と思いました。

 たまたま似たような症状を抱えたピアニストが左手一本で演奏を続けていると言うニュースを見て、もしやと思い専門医のもとを訪ねることにしました。 思った通りの診断結果でしたが、私の場合病気を疑うのが比較的早かったようで、吹けなくなるほど酷くはなっていませんでした。一般的には真面目でストイックな人に多いと言われているので、自分はそこまでじゃないし違うかなと思っていましたが…早い段階で「出来ないの私のせいじゃないわ」と思ったのは救いでした(笑)その時、早く病院に行きなよ、と背中を押してくれた友人には感謝しかありません。

 それから数年経ち、まだ症状を緩和する薬は服用していますが、殆ど元通りに吹けるようになりました。寧ろ以前より、ちゃんと自分の指の動きを制御している感覚があります。
 一応、原因不明の謎の「病気」扱いになっていますが、私の感覚では「病気」というより「悪い癖」に近いような気がします。症状を抱えてはじめて、自分がいかにいい加減な練習をしてきたかということに気がつきました。丁寧にさらっていてあげれば、こんな症状を抱えずに済んだのに…。丁寧に練習していても症状が出てしまう人は居ると思うので、これはあくまで私のケースだということを改めて強調しておきます。もちろん指が正常でなくなった事はショックでしたが、対処していく中で寧ろ多くのことを学びました。そして今自分が吹いたり、教えたりする時に大いに役立っています。

 具体的にどういうことをして症状と向き合い、緩和させていったのかなど、詳しいことは需要があればまた追々書こうかと思いますが、まず今日声を大にして言いたいのはただ一つ!何かおかしいと思ったら、練習を続けないでください。練習してもすぐに上達しないことはよくありますが、練習するほど下手になったり、どこか痛くなったりするのは異常です。そのまま練習不足を疑って頑張り続けてしまうと、取り返しがつかないほど症状が悪化してしまいます。軽いうちなら改善していける可能性がありますから、変だなと思ったら一旦やめること。落ち着いて原因究明をして、楽器が手に合わないなら変える、持ち方が悪いなら直す、病気なら病院に行く。それが未来の自分を守ることに繋がります。

 吹奏楽やオーケストラで、中学生くらいから割と頻繁に持ち替えをするのがフルートです。恐らく他の楽器(例えばB♭クラリネットからバスクラリネットとか)の持ち替えより遥かに簡単なのだと思います…やった事がないので分かりませんが(笑)しかし、子供の頃の自分も含め、持ち替えの前後で全く支障なく演奏出来る人は珍しく、何かしら問題を抱えながら何とか持ち替えているという方が多いのではないでしょうか。特にピッコロを吹いた後にフルートを吹くのは何と吹きにくい事か…。
 以前も書きましたが、私はピッコロが得意なタイプではありません。中学生の頃は周りにやりたがる子がいなかったので、たまたま1年生の時から吹いていましたが、やればやるほど持ち替えの難しさが増していくのでした…。
 
 私は大人になってからピッコロを習いに海外へ行ったのですが、そこで一番驚いたのは、ヨーロッパで聞こえてくるピッコロの音色の可愛らしさです。こんなにコロコロキラキラするんだ…と感動したのを覚えています。キンキンしなくて耳も疲れないんです。今でもこの体験は、こういう音を目指したい、という一つの指標になっています。

 持ち替えのコツは、息の使い分けです。フルートとピッコロは仲間ですが、ピッコロはサイズが半分しかありません。故にフルートのオクターブ上の音が出る訳なのですが、全てにおいて小さくできています。歌口のサイズも若干フルートより小さく、フルートと同じだけの息を使ってしまうとオーバーブロー(吹きすぎ)になります。しかし、多くの方がフルートと同じ息で吹いて、アパチュア(唇の間の穴)だけを小さくしています。そうするとどうなるかというと、高音域に差し掛かった辺りで唇から「ぶー」という音がしてしまいます。アパチュアを狭めるなら、息の量も合わせてあげないと許容オーバーになってしまうのです。

 どちらかというとフルート→ピッコロより、ピッコロ→フルートの方が難しく感じている方が多いのではと思います。私も子供の頃苦労した経験があります。フルートに戻った時に唇が硬くなったままになってしまい、バサバサした音しか出ない…。
 これはズバリピッコロを吹いている時に原因があります。先程書いたように、ピッコロはフルートほど息を必要としませんが、何となくアパチュアだけを小さくして吹いてしまいがちです。そうすると、狭い通り道を多すぎる息が通ることになり、唇でそれをせきとめなければならなくなります。両唇を締めるために、その周りの口輪筋が緊張し、硬くなってしまうのです。ピッコロの音も硬くなってしまいますし、高音域が当たらなかったりします。そして、フルートに戻ろうとしても、一旦硬くなった筋肉をふわふわに戻すことは困難です。
 持ち替えに対応するには、ピッコロを吹く際に息の量をしっかり減らすコントロールをすることが必要です。適切な息の量を保てれば、唇に不必要な負荷をかけることなくピッコロを吹くことができて、フルートに戻ってもすぐアパチュアをフルートモードにすることができます。
 息の量のコントロールをするには、やはりお腹の支えが不可欠です。フルートもピッコロも、リード楽器や金管楽器とは違って、息の圧力がマウスピースに殆どかからない楽器です。つまり息を出したら出しただけ出ていってしまいます。しかしそれでは多すぎるので、どこかで圧力を作り出す必要があります。そこでお腹の支えです。息を吸った結果膨らんだお腹を、そのまま軽やかにキープします。「軽やかに」が大事で、ガチガチに硬くするイメージではありません。私は膨らんだ風船のような弾力がある状態をイメージしています。ここでしっかりピッコロ用の息を使ってあげて、アパチュアの事はあまり気にしないで(小さくしようなどとは思わずに)吹くとちょうど良い事が多いです。

 持ち替えにフォーカスして書きましたが、フルートとピッコロはそれくらい違うと思っていた方が良いです。息の量を意識すると、恐らくピッコロの音もかなり良くなり、息をお腹で支えられれば高音域でぶーぶー言わなくなると思います(この技術はフルートでppやpppを吹くときにも役立ちます)。大方の生徒さんは吹きすぎて鳴らなくなっているので、持ち替えや高音域にお悩みの方は是非見直してみてください。

 さて、今日もしばしばご相談を受ける事について書こうと思います。初めて1年以内の生徒さんや、久々にフルートを再開して演奏法の改善に取り組んでいる生徒さんからよくある質問で、なかなかリッププレートの場所が定まらない、というものがあります。何年も吹いている経験者の方から聞かれることもあります。
 私もかつて学生の頃、楽器を唇(顎)に当たるのに時間がかかっていました。ちゃんと音が出せるポイントが狭い(…と思っていた)ので、早めに構えないと不安でした。でもプロの演奏を見ていると、さっと構えてすぐ吹いたり、吹いている途中に一瞬でリッププレートの汗を拭ってすぐ吹き始めたりします。

 初心者の方でリッププレートの位置が定まらないのはある程度仕方がなく、鏡を見ながら良い音が出るところを探し、日々やっていくうちに定まってきます。当て方についてはこれも人によって色々なのですが、私の考えはこちらの記事に書いています。
 ある程度演奏ができる経験者の方で、音が出せるまでに時間がかかる場合、私の経験では吹き方がシビアなのかもしれません。もうちょっと具体的に言うと、歌口のエッジのどこにどんな幅の息を当てるかというストライクゾーンを、非常に狭くイメージしている事があります。私自身にも、良い音が出る場所からちょっとでもズレると吹けなかった時代がありました。なのでリッププレートのセットは非常に繊細な問題でした。
 今はどうなったかというと、かなりアバウトになりました。さっと当てれば大体音が出ます。当てるのがとても上手くなったのでしょうか…?私はそうは思っていません。以前は楽器のストライクゾーンを狭く捉えていて、実際そういう吹き方をしていたので、ちょっとでもズレると吹けなかったのだと考えています。今は必要以上にアパチュアを絞るような1点を狙う吹き方ではなくて、自分が自然に吹いた息に楽器を合わせるようなスタイルに変わったので、ストライクゾーンもそれに伴って広くなりました。音色も大体になってしまったのかというとそんな事はなく、以前より自由に音色をコントロール出来るようになり、学生の頃より倍音も豊かになったと感じています。
 私の場合は結果的にそうなったので、何か具体的に対策をしたわけではないのですが、普段練習をする時からリッププレートの位置をシビアにしない意識は必要だと思います。気に入った音が出ても出なくても、「パッと当てて吹く」ことを習慣にしてみると良いかもしれません。当てる場所にこだわる暇を自分に与えないようにします。
 当てるのに時間がかかるなと感じている方は、狙いすぎず、ちょっと気楽に吹いてみてはいかがでしょう。
 

 フルートを支えるのにはちょっとコツが要るのですが、これが上手くいかないとピッチも安定しません。だんだん上がってしまうというパターンはあまり無く、下がっていってしまうという問題の方が多く感じます。今日はこの原因となる、フルートが手前に回ってきてしまう問題についてです。
 この問題が発生する原因はいくつかあると思います。一つは、フルートの支え方です。以前の記事でも書いたのですが、胴部管をどんな角度で構えるかで、「楽器の自分側への傾きやすさ」が変わってきます。しっかり顎に圧力をかけて吹きたいタイプの方(かつ筋力のある方)は、よく教本にも書かれている「キィを床と水平に保つ」という方法でも良いかもしれません。しかし私には合いませんでした。
 教室の生徒さんは現在幼児からご高齢の方までいらっしゃるのですが、特に指に痛みがある方や力みの強い方は、フルートの支え方を見直す必要があるかもしれません。
 フルートを構えた際、メカニックが付いている分楽器の手前側の方が重くなるので、どうしても自分の方へ転がろうとする力が生まれます。キィを水平に保つ支え方だと、この力が結構大きく働くので、右手の親指でそれに対抗せねばならず、それに伴って左手の人差し指の付け根、歌口が当たる顎にも相応の力がかかることになります。人によっては右手の小指にも大きな負荷がかかって痛みが出たり、左手の人差し指の付け根がズキズキしたりします。
 これが辛いという方に試して頂きたいのは、今よりもお客さん側にキィを向けて支える方法です。その分頭部管を手前に回してセットします。右手の親指もお客さん側に飛び出さないようにして、なるべく自分側に置いておきます。これらのことについて、詳しくはこちらの記事に写真付きで書いています。
 私も昔楽器が重いものに変わった際、左手の薬指に腱鞘炎を患ったことがあり、持ち方の大幅変更を強いられました。大人の方ですとヘバーデン結節など、関節の痛みを抱えながらフルートを楽しんでいらっしゃる方も多いです。長く楽しむ為に、なるべく最小限の力で楽器を支えられるバランスを見つける事が大切です!

 もう一つの原因としては、フルートを手前に傾け、歌口のエッジを自分の方へ向けて吹くのを心地よく感じているケース。エッジを唇から近いところに置いておきたくなる気持ちはとても分かります…ゴリゴリ吹いている感覚があって、よく鳴っている気がします。しかし、これはあまり良い傾向ではない可能性があります。もちろん実際の音を聴かないと分かりませんが、ピッチは合っているのにどうしても他の人と合わない、溶け込めない、暗い・低いと言われる…こんな時は、エッジを自分の方に近づけすぎて響きが乏しくなり、音が暗くなっているかもしれません。耳は無意識に自分の音を判断して、瞬時に色々な調整をしています。そして、どんどん自分の心地よい方へ偏っていきます。それが良い結果を産むこともあれば、そうでないこともあります。ぜひ客観的な意見を真摯に聞き、自分のベストの支え方・角度を見つけていきましょう。

 フルートやピッコロの頭部管の抜き具合は人によりまちまちですが、フルートは大体5〜7ミリ抜いたあたりで442Hzのラの音が出るように、楽器自体が設計されています。稀に古い楽器…1970年代とかですと440Hzの楽器もありますが、今の楽器は442Hzが主流で、吹奏楽でもオーケストラでも室内楽でもラは442Hzです。
 ただし、エアコンが効いていない暑い部屋だとピッチは上がるので、5〜7ミリより多少抜く必要があるかもしれませんし、逆に冬場だと少し入れないといけないかもしれません。しかしこれは極端に暑かったり寒かったりする場合です。今は学校も冷暖房完備のところが多いでしょうし(私の高校には当時ついていませんでしたが…)、年間通して頭部管の抜き具合を変えることは殆どないと言えます。吹奏楽部だと毎日チューナーを見るかもしれませんが、日によってピッチがあまりに違う場合は、歌口の角度が毎日違いすぎるか、吹き方が毎回違いすぎる可能性がありますので注意が必要です。
 今日は中学生のピッコロのレッスンをしていたのですが、何だか音がぼんやりしていてアタックもしにくそうでした。前回はまだピッコロが久しぶりとのことであまりいじらなかったのですが、今日はセッティングを見せてもらいました。すると1センチくらい頭部管を抜いていました。「えっ、こんなに抜かないと合わないの?」と聞くと「ハイ…」とのこと。それで全ての合点がいき、歌口の角度を変え、頭部管を入れました。
 ピッコロの場合はフルートと同じように5〜7ミリ抜くと、恐らく抜き過ぎです(私の肌感覚ですが…)。少なくとも1センチは抜き過ぎで、それでチューナーの真ん中に合うということは吹き方が相当に明るいのだと思います。私は大体いつも1〜2ミリくらい、相当暑いところで3ミリ抜くかどうかです(個人差・楽器差あり!)。これも恐らくですが、フルートに比べてピッコロの方がこの抜き差しや歌口の角度はシビアで、例えばフルートで何かを1ミリ変える事が、ピッコロでは2〜3ミリの変化に相当するように思います。なので見た目には分からないくらいの幅で少しずつ調節することをお勧めします。
 フルートにしてもピッコロにしても、設計上想定された抜き具合でピッチがチューナーに大体合うようであれば、それほど歌口の角度や吹き方は間違っていないと言えます。逆にただ高いから抜こうという判断でどんどん抜いてしまうのは危険です(低いから入れよう、も同じく注意です)。

 さて、この生徒の場合はヤマハの木管ピッコロを使っていて、頭部管の「三角印」と胴部管の「点」を律儀に合わせて吹いていました。フルートでもこの印の呪縛に囚われてしまう人が多いのですが、これに合わせなければいけない訳では決してありません(少なくとも私はその角度では吹けません…上手に吹けているのならそれでも勿論良いですが、今のところそこに合わせていて上手く行っている例をあまり見たことがありません)。その生徒の構え方だと、印に合わせた場合歌口がかなり外向きになってしまう状態でした。それによって音が明るくなりすぎてピッチも爆上がりしていたという訳です。印よりも少し手前に歌口を向けて、抜き具合も半分くらいにしてみると、だいぶ音も落ち着きました。
 ピッコロはチューナーの真ん中より少し高いくらいで吹いてあげると、全体のサウンドに華を添えられるので、いつも真ん中を狙う必要はありません。しかしその子に関しては中音域の「ド」がメーターで+30セントくらいまで振り切っていたので、適した角度と抜き方でまずは+10〜20になるように息を調節して行くことを課題にしました。いつでもチューナーを頼りにする練習はあまりして欲しくないのですが、方向性を見失ってしまった時には客観的に判断できるので良いと思います。息の向きやスピード・量などが行き過ぎているとピッチも上がるので、それを落ち着かせていく基準にはなります。

 高いのを下げるのはそれほど難しくなく、下がってしまうものを上げる方が大変かもしれません…。歌口が手前に傾き過ぎている、歌口を顎に押し付ける傾向がある、顔が俯いている、息の角度が下に向き過ぎている…などなど原因は色々考えられますが、こういう傾向にある時は本人が吹き心地や耳障りの良さを求めた結果であることが多い感じがします。これはなかなか変えていくのが難しいので、一人で悩まず信頼できる先生に相談することをお勧めします。

 前の記事でも書きましたが、ピッチの問題は頭部管の反射板の位置がずれていたり、楽器の調整が合っていない可能性もあるので、色々な角度から原因を探る事が必要です。アンブシュアが悪いせいだ…と思ってしまうかもしれませんが、8〜9割は楽器の角度や頭部管の抜き差し、息を下向きに吹き過ぎているなどの極端なコントロールが原因です。落ち着いて原因を探って、楽々吹けるようになりましょう!

 皆さん頭部管の反射版の位置、確認していますか??今日の指導先で、オクターブの音程が悪く、頭部管だけで吹いてもピッチが低くなってしまう生徒さんがいて、まさかと思い反射板を確認したところ、随分ずれておりました
 反射板とは、頭部管を掃除する時に掃除棒が止まるところにある板のことで、この内側にはコルクが入っています。この反射板の位置によって、楽器の音程や音色が左右されるので、たまにチェックした方が良いです。特に学校の楽器は長年調整されていないことが多いので、初めて使う時には必ずチェックしましょう。

 チェックには掃除棒が必要です。掃除棒のガーゼを通す方(穴が空いている方)を持って、反対側の刻みがある方を頭部管の中に差し込みます。反射板に当たったところで、掃除棒の刻みが歌口のどこに来ているかを見てください。刻みが真ん中にあればOKです。もし左の方にある場合、コルクが劣化して縮んでいる可能性がありますので、楽器屋さんで交換してもらわなければなりません。ちょっとの調整で済む場合もあるので、ズレていたら楽器屋さんに相談しましょう。刻みが歌口の右側に寄っているのはあまり見たことがありませんが、そんなにズレること自体が異常なので、それも修理が必要です。コルクが縮んで機能していない可能性が高いです。
 (ヤマハのホームページの図が分かりやすいので、こちらもぜひ!自分で調整できる方法も載っていますが、歌口を握ってしまったりして余計故障する可能性もあるので、専門家に任せることをお勧めします)

 こういうことで演奏がしにくくなっていて、どうにも上手くいかないのは本当に時間がもったいないので、まずはチェックしましょう今日の生徒さんの楽器も、もっと早く気付いてあげれば良かったと反省しています、、、。普段から掃除の時に反射板を押さないように気をつけることも忘れずに!頭部管だけで吹いた時に、何だか周りの人よりやたら低い/高い場合は、反射板を疑ってみてください。

 今日は教室レッスンとオンラインレッスンを併用している生徒さんと、オンラインレッスンでした。エチュードや基礎練習を頑張っている方で、タファネル・ゴーベールの中に入っているエチュードもやっています。今日はその中の「唇の柔軟性」のための課題に入ったのですが、かつて学生の頃にこのワードを見た時と今では、捉え方が全く違うことに気がつきました。
 昔は「唇の柔軟性」の課題を見た時、唇を「柔軟」によく動かすための練習なのだなと思い、跳躍が多く配置されたエチュードを必死で吹いていたように思います。しかし、その時に「柔軟」だと思っていた動きが、逆に「柔軟性」を妨げていたのではと・・・
 私はレッスンで、必要以上にアンブシュア(唇の形)を意識しないようにとお伝えすることが多いのですが、多くの方はやはりアンブシュアをきっかけにして音のコントロールをされています。素早く高い音に上がる、低い音に下がる、pp(ピアニッシモ)を吹く、ピッチを上げる・・・などなど、唇を使いすぎてしまいがちな操作はたくさんありますが、おそらく名人と言われる人たちほど唇を意識して吹いてはいないと思います。そうでなければ、達人的スピードで跳躍ばっかりの曲を吹きこなす事はできないでしょう(学生の頃はものすごいトレーニングの賜物なのだと思っていましたが)。
 「唇の柔軟性」という言葉を久しぶりに見て、これは場合によっては誤解を招く可能性があると感じました。なので、唇を「柔軟」に動かすということではなく、コントロールを妨げない柔らかい唇をキープするというイメージに置き換えてみると良いかもしれません・・・。唇自体は筋肉ではなく、正確にはその周りの口輪筋が稼働するのですが、他の管楽器とは違い思ったほど筋肉は使いません(必要に迫られて一通りの管楽器を経験したのでこれは間違いありません)。もちろんだらだらの状態では良い音が出ませんが、ぎゅーっと引っ張ったり、すぼめたり、上唇を下に引っ張ったり・・・必要のない力みは音の質を下げてしまいます。どんなに激しいコントロールを求められる時でも、唇の柔軟性を失わない・・・つまり「なるべく何もさせないということです(笑)

 でもそれじゃあどうやって音の高さやら諸々をコントロールするのかという事ですが、まずはタンギングの仕方について研究をすると良いと思います。アンブシュアに頼らず、アタックのシラブル(「トゥ」や「テ」など)を有効活用して、省エネで美しい発音ができる技術を身につけると、どんな跳躍でも疲れずに吹けてしまいます。このことに関しては以下の記事が参考になるかもしれません。
 フルートのタンギング
 フルートのタンギングの練習方法

 そしてオクターブの倍音奏法が苦手な時は、こちらの練習が非常に役立ちます。唇が固まっていると出来ないので最初はちゃんと出来ないかもしれませんが、やろうとすることで低音域の鳴りが非常に良くなったりと収穫も多い練習です。調子悪いな・・・というときにもオススメです
 オクターブの跳躍がきつい時は
 
 ・・・こうやって考えてみると、唇を柔らかくしたまま吹けないのに、そういったエチュードを吹くことはあまり良いことではないですね子供の頃は気合いで出来ちゃったりするのですが、その時無理して吹いたままだと大人になって苦労します(←私)しなやかな吹き方が出来てから「あぁこんな感じね〜」と思いながら吹くくらいの方が良さそうです。跳躍がたくさん出てくるような課題で、途中で疲れてしまったり唇の固さを感じる場合は、あまり長くは練習せず、アタックの質向上に努めたり、オクターブの跳躍が楽に出来るようになってから再度挑戦してみてください。急がば回れです

(上記はあくまで私見です、全ての方にこの考え方が当てはまるわけではないかもしれませんので悪しからず・・・)


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